特集-PFI_四日市市

　つぎに訪問したのは、お隣りの四日市市教育委員会。四日市市は、三重県の中でも人口29万人を抱える県下第一の都市です。ここでは、昭和30年代に建設された校舎など改築時期を迎えた市内の小中学校4校の校舎、関連施設の整備をPFIで行なおうと、この2月実施方針を発表したばかりです。小中学校というと、大型事業と違い地元に密着した施設だけに、我々にとって見ても、校舎整備をPFIですか、という感じでした。
　対応していただいたのは、教育委員会教育施設課の大橋進課長とPFI担当副参事の近藤康三さん。まず質問をぶつけ「正直な話、小中学校でPFIですか。これまでの経緯と、特に地元建設業者さんからの意向などはありましたか」と質問しました。
　いきさつはこうです。財政事情の厳しさは、四日市市でも同じ。急激な税収落ち込みとあわせ、これまでの大型物件の償還などで投資的経費も大幅ダウン。そういう中で、小中学校の校舎整備は第2次ベビーブームといわれる昭和52年から57年にかけ建設された校舎が改築時期を迎える一方、予想される東海地震発生時での耐震性が重要な課題となっていました。学校施設は生徒の安全だけでなく、一時的な避難施設として大きな役割を持つものとされています。すでに耐震診断を進め、まだ手をつけていない施設は10校が残っていました。これまでのペースでいくと、2年に一校程度しか、建設できないため、市内全域の整備が完了するには相当の時間がかかる見通しでした。
　どうしたら早く整備が出来るのか考えていたところ、PFI法が制定され、それでは一度検討してみようとなった。最初にPFIありき、ではなく、ひとつの検討材料として試しに調査をPFI協会に依頼した、との事です。担当者間でも、文化施設など大型施設でもないため、校舎整備でのPFIは難しいだろうと思っていたらしいです。しかし、報告ではやり方次第では充分可能ということ、そこで急きょPFIが浮上してきたとの事です。報告では、1校だけの整備では無理があり、4校程度になればスケールメリットもあり、官民とも対応できるとありました。従来の公共事業の流れで行くと、4校だと8～10年かかるところを1年間で出来るわけですので是非取り組んでみようとなったわけです。
　全国の例を見るとこれまで校舎整備で実例が出ていますが、大半は校舎と幼稚園や、体育館、プールを市民に開放するための複合施設ということです。しかし、四日市市の場合、校舎のみで挑戦してみようということになりました。
　メリットは 1.財政負担の軽減 2.支払いが均等化され、財政負担が平準化できる 3.未改築校の早期整備、複数校の一括整備ができる 4.資産価値・校舎の高い水準での維持が可能、などなど。
　一般的なPFIは、事業者によって委託された期間を維持運営管理まで任され、20年後、30年後に所有権を返還する。金融関係の融資は、施設という資産があるため、それを担保に融資を受け、返還していくというのが一般的。しかし、今回の対象である文教施設、小中学校校舎整備は、国の補助金の関係もあり、建設したら「所有権は市へ」返還してもらい、その後は維持管理が主体となります。
　いずれにしても、ようやく実施方針の公表まで辿り着いたばかり。これからが本番です、と担当者。実施方針の策定・公表し、開催した先日の説明会には、40社120名が参加、関心の高さを見せたということですが、実際公募段階でどれだけになるのか。PFI事業も、これからは民間の方が選ぶ時代になるといわれており、今後の動きが注目されています。
　一番関心の高い地元建設業界の動きですが、やはりかなり反発。「少し早いのでは」という議員。経済界の意見もあるということです。小中学校整備はこれまで地元建設業者が施工を担当、維持補修にあたってきただけに、反応も高いものがあったようです。議会には何度も説明し、早く整備するにはこの方法しかない、ということを説明しているし、地元業界にも一緒に勉強しようと呼びかけているとの事です。しかし、もうひとつ温度差もあるようです。

四日市市では、小中学校整備のPFI事業の説明を受ける

早く整備したいから
PFIで!!

　今回PFIの先進地・三重県桑名市、四日市市を訪問することが出来、大変お忙しい中、丁寧に説明して頂きました。現場で、一生懸命新しいものに挑戦している方の熱意を肌で感じ、我々も勉強していかねば…と心新たにしているところです。
　四日市市の担当者の方からは、「ここの建設業者の方は、一緒に勉強しようよと言っても、なかなかですが、静岡の方がこんなところまで熱心にこられるとは感心しています。」という言葉を頂きました。
　ただ、大型工事ではなく、小中学校までPFIという時代を迎えるにあたって、地域で生きる地元建設業界もうかうかしていられない、という気持ちです。協会に持ち帰り、どういうことが我々に出来るのか、真剣に検討していきたいと考えました。

広報委員会のメンバー

四日市市ホームページ　http://www.city.yokkaichi.mie.jp/
PFIによる四日市市立小中学校施設整備事業　 http://www.city.yokkaichi.mie.jp/schoolpfi/index.html

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